11年前に、ラジオ深夜便の朗読にはまっていました。
11年前、機械警備という夜勤の仕事をしていた時のことです。
機械警備の仕事は、警報センサーが発報すると、会社からの指示で、現場に急行して対処します。
それまでは、すぐに出動できるように車の中で待機している時もあります。
警報センサーは性能が良く、天候状態や虫などのちょっとしたことでも反応してしまいます。そのたびに出動しますが、何もない時はずっと待機状態です。
待機状態の時、眠らないようにするためにラジオを聴いて気を紛らせていました。
そんな時、NHKのラジオ深夜便の朗読にはまっていた時期がありました。
これが番組タイトルでした。
夜の闇に、安っぽいカーラジオのスピーカーから曲が流れ、松平さんの渋い声で藤沢周平さんの物語が朗読される。
深夜のために意識がぼんやりしている中、
平成の時なのに、なんとなく江戸時代の日常が、目の前に浮かんでくるような時間を過ごしていました。
幻のような情景は江戸時代末期。
季節は三月末。
時刻は午後4時頃。
夕暮れが始まる頃の、淡いオレンジ色の陽ざしがあたりを染めている。
町人の娘たち、武家の家族、商家のいいなずけ同士。さまざまな身分の人達が、穏やかな笑顔と振る舞いで、満開前の桜並木をゆったりと歩いている。
そんな幻想的な印象でした。
想像の世界ですけどね。
ぼくにとって、ラジオ深夜便の朗読を聴いていた時は、現実を忘れられる素敵なひとときでした。
待機中は、いつ出動の連絡がはいってくるかどうか分からず、気はずっと張りつめっぱなしでした。でも、出動の連絡がなく、ラジオ深夜便の朗読を聴けている時間がとれると、自由なイメージの世界でゆったりに浸れていたちょっと贅沢な時でした。
仕事は緊張の連続で大変でした。でも、自由に安らげる時が少しでも持てるというのは、心を良い状態に保つためには大切ですね。
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